マリンジャーナリスト。写真家。ヨットオーナーとして30余年のキャリアを持つ。小型ボート、エンジン等にも造詣が深く、日本一周、小笠原航海等の豊富な経験を持ったベテランシーマンでもある。
世界中が不況の嵐に巻き込まれて、中国経済も大きく後退していると伝えられているなかで、中国最大のボートショー、上海国際ボートショー(CIBS)が上海ヨットクラブの協力によって、上海の市街地にあるエキビジションセンターで華々しく開催された。
開催期間は4月16日から19日までの4日間だったが、380社以上の国内外ブランドが参加、トップビルダーやマリン用品の主要メーカーが世界各地から集まり、日本の主要メーカーも参加しての華々しい国際ボートショーとなった。

現在、中国経済はアメリカ、日本、ヨーロッパなど主要先進国の不景気のあおりをまともに受けて輸出入ともに落ち込みが激しい。当然、マリン業界も巻き込まれてその需要は大幅に減少傾向にある。
しかし、今回の上海国際ボートショーは海外からの積極的な参加によって過去最大の規模で開催された。アメリカやヨーロッパなどのボートやヨットメーカーは、従来の需要国や地域の経済状況の落ち込みから販売不振に至り、新しい需要開拓のためにアジア向けの販売戦略を展開し始めている。特に中国には大きな期待感を持ち、早くからセールスマーケティングを開始したようである。シーレイ、マーキュリー、サンシーカなど一部のブランドは早くからセールスを展開しているが、今年は、フェレッティ、ブランズウィックなどのコングロマリットグループが華やかなマーケティングを開始して本格的な販売基盤の構築に乗り出してきている。また、プリンセスやベネトウ、リーガルなども本格的な進出をもくろんでいる。国別ではイタリア、フランス、オーストラリアなどが各社合同でパビリオン形式の出展を行っており、それぞれの国柄を表し興味深い展示を行っていた。日本からは日本舟艇工業会がFRPリサイクルを含め日本国内のマリン業界の紹介を行っていた。

展示会場は上海市内の中心街にあり、会場の周りには多くの高層ビルが林立している。古い2階建ての会場はメインホールから左右に中庭を囲むように立てられており、ロシアによって建造された回廊の建物である。現在は展示会場としていろいろなイベントに使用されている。尖塔がそびえるメインホールの前には大きな噴水があり、池を囲むように大型艇の展示が行われていた。ここには、ベネトウ、シーレイなど輸入艇の大型ボートを中心に展示していたが、中国国産艇では53フィートのサロンクルーザーや48フィートのトローラーボートが競って展示されていた。これら中国国産ボートは海外輸出向けの豪華なサロンクルーザーで、建造歴史も古く品質クオリティにおいても輸入艇と遜色ない技術力を発揮していたように感じた。
中国で建造され輸出されるボートや輸入されるボートの大半がサロンクルーザーやトローラーが占め、輸出国はアメリカ、ヨーロッパを中心に、ニュージーランドやオーストラリアなどマリン業界の先進国に向けて送り出されている。日本にもわずかに輸入されているが、欧米の需要によって成り立っているのが現状である。日本やアメリカで盛んなフィッシングボートはほとんど見受けられなかった。現在、まだ中国ではボートフィッシングやトローリングなどボート遊びとフィッシングは需要がほとんど無いのが現状のようだ。

ヨットの展示では、ベネトウのオセアニス50が最大艇として展示してあったが、ほかはどれもディンギーや小型ディセーラーが展示されていた。特に南屋外会場に展示していた上海Far East FRP Boat社は、いまでは世界最大の小型ヨットのメーカーであり、OPディンギーの世界最大のビルダーとして年産4000隻以上を輸出しており、OPディンギー以外にもカタマランやディセーラーなども積極的に製造販売、ここ数年で世界最大のヨットメーカーとなった成長著しい企業である。
東屋外会場にはHelmsman Yacht社が木造ディンギーを展示していたが、この会社は中国でヨット、クルーザーを建造販売する日本人の松本充男氏と其田信一氏が中国で起こした会社である。工場は上海蟹で有名な蘇州の?澄湖の近くにあり、風光明媚な美しい環境のなかでヨット造りが進められている。
蘇州の代表的な木工技術を生かしたウッデンボートからFRPまで幅広く手がけ、FRP艇のクルーザーは、ヴァンデスタットの設計するGoldStar 34フィートと26フィートの2艇種を主に建造しているが、現在は5メートルのディセーラーが新たにラインナップに加わっている。同社は、今回、展示艇としてウッデンオプティミストとシーカヤック、ガフリグの小型帆船HAVEN12を出品していたが、基本的には量産艇ではなくカスタムヨットとして、木工技術の中心地である蘇州からの提案との印象を受けた。
また、7.7mのディセーラー、Retro Costal SailorをWeihai Zhongfu Xigang Ship社が展示していた。現在中国ではセールボートの人気が高まってきているそうだが、今回の上海ボートショーでは目立ったヨットの展示はあまり見られなかった。

上海国際ボートショーの最大の魅力は、数多く出品されているインフレータブルボートや艤装品の種類の豊富さである。欧米の艤装品の多くが中国で製造されていることを考えると、中国の製造会社がボートショーに展示して、海外バイヤーへのセールスプロモーションを積極的に展開しているわけで、価格を聞いてみると、ビックリするほどの低価格で取引されているようである。まさに世界の造船コストの多くが中国によって支えられている感が否めない。
インフレータブルボートの出展は数十社を数え、インフレータブルボートオンパレードといった感じである。日本からもアキレスが出展していた。アキレスはインフレータブル用の素材の製造メーカーであり、ボートだけでなくハイパロンなど耐候性、耐久性、耐薬品性など特殊な素材を開発、幅広い用途に使用されている。FRPハルにインフレータブルを装備した本格的なボートも数多く展示されており、世界のインフレータブル展示会というイメージすらした。インフレータブルは手軽に製造できるボートということもあるが、世界中で販売されているインフレータブルボートの大半が中国で造られ輸出されている事情があるようだ。中にはオリジナルの特別仕様のカスタムモデルも参考出品されており、インフレータブルボートは中国の独壇場であるとの印象を強く持った。
チーク加工ではデッキや床素材として、本物のチークをオリジナル寸法に合わせて加工して販売する会社上海CAIDAO INDUSTRIES社が出展していた。本来は家具や家屋、ガーデニングの木造製品の製造会社であるが、ボート関係ではチークデッキをボート寸法に加工してデッキや床に張るだけの製品をオーダーメードによって対応してくれる。手ごろな価格で夢のチークデッキを手に入れることができる。
今回の上海ボートショーを見て、中国のプレジャーボートは欧米や日本から見ると、一般的にはまだ格段の開きがあるように感じるが、プレジャーボート造船国としてはすでに日本をはるかに凌ぐ規模で展開しており、今後のマリーナ整備や経済の発展に伴って大きな成長産業であると感じた。

上海で行われた国際ボートショー4日間の会期中に海外および国内の380ブランドを超える参加と200隻近くの各種のボートやヨット、たくさんの設備や艤装品など、エキビジションホールを最大に利用した展示の中で第14回上海国際ボートショーが盛大に行われ、世界各社のバイヤーから一般の観衆まで多くの人々で賑わい、売手と買手が熱烈な交流を行って大きな成果を挙げ無事に閉幕した。
オーガナイザーによる最新の統計からすると、今回ボートショーに参加した出品者の割合は、舟艇が45%、設備や艤装品、アクセサリーが30%、残りの25%をマリーナ、クラブ、デザイン、およびほかのサービス部門の割合となっているが、過去に2回から比べて今年はサービス部門やマリーナなどのその他の部門が倍以上に伸びており、過去数年間の国内マリン環境の充実を目の当たりにして、マリン産業の発展を確信している。この状況を見るかぎり世界の金融不況の影響は中国国内のプレジャーボートの消費市場に対してあまり大きな影響は今のところ見受けられていない模様だ。
今回は有名な海外ブランド、Ferretti Group、Aziumt、Beneteau、Princess、Brunswick ,Sunseeker、Regalが参加を博して大きな成果を挙げた。
初めて参加したイギリスのPrincessは42フィートの展示艇が初日から700万元で契約に成功、ほかにも、58フィートと95フィートの2隻をそれぞれに1500万元と5000万元で契約に成功した。Brunswickも585万元と340万元のプレジャーボートを売り出し、順調に買手が現れ、最終的に9隻の契約がまとまった。そのなかで585万元のMeridian391は中国国内で最初の契約が成立した。
Ferretti Groupは70フィートと120フィートの注文を得て、ほかにも56フィートから115フィートのプレジャーボートの契約を5隻成功させた。そして、グループ最大のカスタムボートのブランドCRNは50メートルの遊覧船用のボート建造を引き受けることができた。アメリカのRegalは426万元の4080の契約を得た。フランスのBeneteauはヨーロッパから展示最大のセーリングクルーザー、Oceanis50を300万元以上で売り出し、イギリスの豪華サロンクルーザーSunseekerも70フィートを売り出して、多くのマリーナやクラブなどから合計6隻の契約を締結した。
また、中国国内外のほかもメーカーでも小型ボートやヨットの契約を数多く得ることができ、素晴らしい販売成績をボートショー会期中に達成することができた。買手は主に個人やクラブなどお金持ちの人々が購入しており、半数以上が江蘇・浙江と珠江三角洲地区から来ている。内陸部からは内モンゴル、成都などの富豪がかなりの購入者になり、中国西部や北部の地域が沿海地区をしのぐ勢いを得ている。また、フランスのカヌーブランドRotomodが4日間の会期中に200隻も売れ、そのうちの150隻は寧夏の別荘地のオーナーが契約している。これによって中国国内のプレジャーボートの発展に大きく貢献していると考えられる。
今年の上海国際ボートショーには世界46の国と地域から参加しているが、海外からの来場者は昨年を下回っている。しかし、中国国内の来場者は大幅に増しており、展示会の質も向上して全世界の経済危機のなかで、中国国内の消費とマリン産業の発展の勢いをはっきりと示した結果だと考えている。
海外からの参加ブランドも改めて中国国内の需要の大きさを実感して、イタリアなど次回はもっと大きな展示コーナーを予約していき、同様に 5回連続参加しているフランスの船舶工業連盟もアジアのマーケットの今後の発展を大きく評価してさらに大きな期待を示している。さらに、日本から初めて参加した日本舟艇工業会は、早くも来年の上海国際ボートショーで“日本館”の展示会場を予約している。
全国政治協商会議の外事委員会主任の趙啓正は、16日に開幕式での挨拶で、「国国内のプレジャーボートの発展に国家や政府が高い関心を示しており、中国国内のプレジャーボートの現状と製造技術の発展をさらに考察して、国内のプレジャーボートの技術を掌握し、海外の先進技術を取り入れた国内プレジャーボートの規模拡大を目指していく」との決意を述べていた。そして、中国国内外のブランドが結束してマリン業者協会の各方面にも働きかけ、さらに国内プレジャーボートの産業を強固に発展させる提案をしていき、国家の関連している部門にも積極的に働きかけると述べていた。
今回のボートショーでは多彩なイベント活動も行われた。OPヨットレースに多くのファミリーが参加して、子供たちが競い合って熱戦を繰り広げていた。また、淀山湖ではチャリティヨットレースが行われ、35隻のヨットが激しいレースを展開して 民間による最大のヨットレースが行われた。これにより、ヨットレースを通して国内の自閉的な病気の児童のリハビリテーションプロジェクトを立ち上げることが自然発生的に行われることになった。
上海国際ボートショーの創立者でもあり、上海船舶工業の業者協会の事務総長の楊氏は、中国国内のプレジャーボート環境の充実と設備が日に日に完備しており、プレジャーボートに関する法律の条例も補充されるに従って、中国国内のプレジャーボート産業発展の基礎が強固なものになり、政府のプレジャーボート推進の増大に伴って、世界経済は楽観的ではないが中国国内のプレジャーボート産業の発展はさらに積極的に大きく拡大して盛んになると述べている。