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3.スターリングエンジンの基本原理


スターリングエンジンの基本原理は、温められた気体は膨張(容積が増える)、冷やされた気体は収縮(容積が減る)する法則を人工的に作りだす事からはじまる。
温めた気体や冷やした気体はそのままでは膨らんだままであったり縮んだままであり、物体を動かすエネルギーは生まない。そこで、密閉された容器の中で熱く膨張した気体と冷却して収縮した冷たい気体を強制的に動かして、圧力の変化を造りだすことで往復運動の反動を生み出す。その気体を動かすピストンをディスプレーサピストンと呼んでいる。

ディスプレーサピストンだけでは運動エネルギーとして稼動することがないので、パワーピストンをクランク軸に90°の角度に位相差をつけて取付、膨張・収縮に合わせてクランク軸を動かす。※90°の位相差の関係はピストンの上下運動を回転運動に変換するエネルギーを生み出す基本的構造の仕組みだ。
そしてクランク軸にはフライホイールが取り付けられ、ピストンの上下運動をスムーズな回転運動として安定させる仕組みである。


図

4.スターリングエンジンの構造


スターリングエンジンの構造はシンプルで簡単な物だ。一般的には、ピストンやディスプレーサを高圧な気体(空気・ヘリウムガス・窒素ガスなど)で密閉したシリンダーと、気体を加熱膨張させる加熱器、熱くなって膨張した気体を急速冷却させる冷却器が組み合わされ、その他に熱を蓄える再生器で構成されたエンジン本体と、往復運動を回転エネルギーに変換する機関部(通常は内燃機関と同じ原理で、クランク軸とフライホイールなどの基本原理は同じ構造)で構成されている。

スターリングエンジンのメイン装置のシリンダーの構造には、ディスプレーサ形スターリングエンジンと2ピストン形スターリングエンジンの構造がある。

その中でディスプレーサ形スターリングエンジンにはディスプレーサピストンのシリンダとパワーピストンのシリンダを一つのシリンダによって共用するβ形構造とディスプレーサーのシリンダとは別にパワーピストンのシリンダを配置したγ形式に分けられる。

γ形は構造がシンプルで設定の自由度が広く、低温度差の比較的出力の小さいエンジンに使用される。β形はディスプレーサピストンとパワーピストンを同一のシリンダーで共用するために、同型のボアを持つことになり、圧縮比を上げた高い出力が得られる特長がある。そのために小型で高出力のエネルギーが得られるが、構造は少し複雑になる。

2ピストン形スターリングエンジンはα形スターリングエンジンとも呼ばれ、加熱シリンダーと冷却シリンダーを別に設置して両方のピストンを連動させて回転運動を作り出す構造だ。

図

5.マリンの世界における発電機の役割


現在、実用化されているスターリングエンジンの利用目的は、内燃機関のような高出力や瞬発力を必要とするエンジンではなく、冷凍機や発電機などのヒートポンプやコージェネレーション・システムを主目的とした活用が進んでいる。また特殊な使い方としてスウェーデンでは潜水艦のエンジンとして稼動しており、日本でもテスト採用されている。

スターリングエンジンの構造や稼動理論の利点を生かして、最も適した使い道としては発電と温水供給やヒーター熱源などを同時に利用できるのが最大の特長である。そして、高い発電効率と温水ヒーターの発熱の利用が最大限に達したとき、スターリングエンジンはカルノーサイクルに近づき、相対的熱交換率は90%近くにまで達する。簡単に言うと電気を作り、お湯を沸かし、暖房にも利用できるので燃料効率に優れ、エネルギーを無駄なく利用できると言うことだ。

以上の事柄で、スターリングエンジンの稼動原理や特長、利用の現状などが大まかに理解できたことと思う。

そこで、マリンの世界ではスターリングエンジンがどのようにかかわり、どのような使われ方をしているのか考えてみたい。

スターリングエンジンが再び注目され積極的に研究が開始されたのは、世界的な自然環境問題や省エネルギーに対する問題意識の高まりから、静かでクリーン、熱源に利用できる材料が多岐に渡るなど、化石燃料に偏らない将来有望な解決策の一つとしてクローズアップされてきた。しかし、理想のエンジンと考えられているスターリングエンジンだが、すべてに万能なエンジンというわけにはいかない。スターリングエンジンの構造上、現在製造できる大きさや出力には限界があり、実用面でかなりの制約がある。

大型の車やボートなど強力なトルクを必要とするエンジンの代替え機関として、直接プロペラや車輪を駆動させるには現在のところ、コンパクトで効率の良いガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関にはるかにおよばない。現在完成された内燃機関と同じ出力を得るためには、エンジン本体を大型化する必要があり、重量やコスト、スペースなどむしろエネルギー効率が落ちる結果となる。

マリン用エンジン機関の一部として採用されているのは、特殊な例になるが、スウェーデン海軍が採用している潜水艦に使用されている事例が良く知られている。しかし直接プロペラを回すのではなく、モーターを動かすバッテリーを充電する発電機として使用されている。本来潜水艦は水中での推進力にバッテリーモーターを使用している。そのバッテリーの充電にディーゼル発電機を使用するのが一般的だ。しかし、ディーゼル発電機は振動や音が大きいので潜行中の発電には戦略上不向きである。そこで、スターリングエンジンで充電すれば、音が静かで振動も少なく、通常型潜水艦には理想的なエンジンと考えられさらに研究が進められている。

現在マリン用にスターリングエンジンを使用するとしたら、発電機関係に利用するのが最も現実的のようだ。ボートに搭載されている発電機はディーゼルエンジンのAC発電機が一般的に使われている。メガヨットなど大型のボートは別だが、30フィートクラスから50フィートクラスの中型ボートでは、係留中の発電機の排気音や振動はかなり大きく、マリーナなどでの夜間使用などはとても使用出来ない。もちろんマリーナでは発電機の夜間使用は禁止しているところが多い。そのために陸電を使用している。

高性能なスターリングエンジンの実用化はドイツを筆頭にアメリカ、オランダ、ノルウエー、スウェーデン、ニュージーランドなどが発電機を含めてコージェネレーション分野で積極的に研究開発を行い、世界市場をリードしている。日本でもスターリングエンジンは生産されているが、より小型で高性能なスターリングエンジンの開発が期待されている。


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